米国宛ての関税を事前に払うとき、日本郵便ルートで使えるアプリは2つあります。Zonos PrepayとShip&coです。件数が増えたらShip&coのほうが得になるのでは、と考える人は多いのですが、料金体系を分解するとコスト面ではどんな件数でもShip&coがZonos単体を下回ることはありません。この記事では、その理由を仕組みと料金の構造から説明し、実測データで裏づけます。あわせて、Zonos側の手数料が実際にいくらだったのか、推定式をどう組み直したのかも公開します。
結論:件数に関わらずZonos Prepayを直接使う
先に結論を書きます。2026年9月時点で、コストだけを判断基準にするなら答えは固定です。
- Ship&coは関税を安くする仕組みではなく、Zonosの上にかぶせる出荷管理ツールである
- 関税額そのものはどちらを通しても同額。Ship&coを使うとその分だけ利用料が純粋に上乗せされる
- したがって発送件数がいくら増えても、コストでShip&coが有利になる分岐点は存在しない
「件数が多いと単価が下がるから、ある件数を超えたら逆転するのでは」という直感は、この構造では成り立ちません。理由は後述します。
比較の前提:何を基準に判断したか
比較の条件を先に明示しておきます。
- 判断基準はコストのみとする。「1件ずつ手作業するのが大変」という運用上の理由は、Zonosのダッシュボードがブラウザから操作できるため今回は考慮しない
- 対象は日本から米国宛て、内容品価格2,500USドル以下の郵便物
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- 料金は各社が公開している料金表に基づく(2026年9月時点)
- 関税・手数料の実額は、運営者が実際に発送して決済した記録を使う
仕組み:Ship&coは関税の元締めではない
ここが誤解されやすい点です。Ship&coは自前で関税を計算・徴収しているわけではなく、裏側でZonosを使っています。日本郵便の案内でも、Ship&coとZonosを連携させる形が明記されています。
公開されている説明を要約すると、次のような位置づけです。「個人が単発で発送する程度ならZonos Prepayアプリでの手続きも容易だが、EC事業者のように出荷件数が多いと荷物ごとにアプリで手続きするのは現実的でない。Ship&coとZonosを連携させると、送り状発行から関税の事前支払いまでまとめて処理できる」。
つまり両者の関係は次のようになります。
| レイヤー | 担っているもの | 費用 |
|---|---|---|
| Zonos(下層) | 関税の計算・徴収・DDP申告 | 関税+手数料 |
| Ship&co(上層) | 送り状発行の一元管理、ネットショップ連携、他配送業者との統合 | 1件あたりの利用料 |
Ship&coの本来の売りは、Shopifyなどのネットショップとの連携や、複数の配送業者をまとめて扱えることです。関税を安くする機能ではありません。この点を押さえると、コスト比較の答えは構造的に決まってしまいます。
料金体系を並べる
両者の料金を一覧にします(2026年9月時点)。
| 項目 | Zonos Prepay | Ship&co |
|---|---|---|
| アプリ利用料 | 無料 | 従量課金プラン 1件33円(税込) |
| 月額プラン | なし | 入門枠 月50件まで1件22円=月額1,100円 |
| 大量出荷時の単価 | —— | 月3,000件で1件13円 |
| 最低月額 | 0円 | 1件も発行しなくても最低月額インフラ料金1,100円 |
| 関税 | 実額 | Zonos側の実額がそのまま発生 |
| 手数料 | 通関手数料+為替コスト(1パッケージごと) | Zonos側の手数料がそのまま発生 |
表の最下段2行が重要です。Ship&coを使っても、関税と手数料はZonos側の金額がそのまま発生します。Ship&coはこの部分を肩代わりしません。
構造から言えること:上乗せにしかならない
式で書くと分かりやすくなります。
- Zonos直接利用の月間コスト = (関税+手数料)の合計
- Ship&co経由の月間コスト = (関税+手数料)の合計 + Ship&coの利用料
右側の式は、左側の式にプラスの値を足しただけです。Ship&coの利用料が0円になることはない(最低月額1,100円がある)ため、両者が等しくなることすらなく、常にShip&co経由のほうが高くなります。
件数別に金額を出してみると、差額は単純に増えていきます。
| 月間の発送件数 | Zonosの上乗せ額 | Ship&co(従量課金33円) | Ship&co(月額プラン) | 差額の最小値 |
|---|---|---|---|---|
| 0件 | 0円 | 0円 | 1,100円 | 0円 |
| 10件 | 0円 | 330円 | 1,100円 | +330円 |
| 33件 | 0円 | 1,089円 | 1,100円 | +1,089円 |
| 50件 | 0円 | 1,650円 | 1,100円 | +1,100円 |
| 100件 | 0円 | 3,300円 | プランによる | +1,100円以上 |
| 3,000件 | 0円 | 99,000円 | 39,000円(1件13円) | +39,000円 |
「Zonosの上乗せ額」の列がすべて0円になっているのが答えです。アプリ利用料が無料である以上、比較対象は「上乗せがあるか、ないか」でしかありません。件数が増えるほど差額は開く一方で、縮まる方向には動きません。
「33.3件で逆転する」という数字の意味
Ship&coについて調べていると、従量課金と月額プランの分岐点が出てきます。1,100円÷33円で約33.3件、つまり月33件を超えると月額プランのほうが安くなる計算です。
この数字自体は正しいのですが、これはZonosとの比較ではなく、Ship&co内部のプラン選択の話です。「Ship&coを使うと決めた場合に、どちらのプランにするか」という判断材料であって、Zonosを使うかどうかの判断には使えません。コストだけで見るなら、そもそもShip&coを使う場面自体がない、というのが今回の結論です。
Zonos側の実費:関税と手数料の実測
Ship&coを使わないとして、Zonos側で実際にいくらかかるのかを記録した実測データです。いずれも米国宛て、運営者が実際に決済した金額です。
| 発送日 | 品目 | 内容品価格 | 関税額 | 手数料 | 合計 | 関税率 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 2026年9月7日 | 腕時計 | 18,527円 | 2,316円 | 793円 | 3,109円 | 16.8% |
| 2026年9月9日 | トレーディングカード(申告$49.99) | 約7,800円 | 0円 | 552円 | 552円 | 0% |
| 2026年9月19日 | ボールペン(申告$23) | 3,611円 | 451円 | 608円 | 1,059円 | 12.5% |
なおマニュアルに記載されている計算例では、内容品22,000円・関税率15%区分で関税3,300円+手数料881円=合計4,181円となっています。この例だけ見ると手数料は内容品価格のおよそ4%です。
手数料の推定式を実測で組み直した
ここからが、実際に払ってみないと分からなかった部分です。
当初は「手数料=申告価格の約4%」という比例式で見積もっていました。しかし低額品の実測2件を当てはめると、大きくずれることが分かりました。そこでいったん「申告価格×4%と600円の大きい方」というフロア方式に組み直しましたが、これも暫定値でした。その後、腕時計の内訳(関税2,316円・手数料793円)が判明したことで、手数料は申告価格ではなく関税額に連動していると分かりました。2026年9月21日、式を次のとおり確定しています。
Zonos手数料 = 556円 + 関税額 × 10.3%
| ケース | 関税額 | 実際の手数料 | 現在の式での計算値 | 誤差 |
|---|---|---|---|---|
| トレーディングカード | 0円 | 552円 | 556円 | 0.7% |
| ボールペン | 451円 | 608円 | 602円 | 1.0% |
| 腕時計 | 2,316円 | 793円 | 795円 | 0.3% |
3件とも誤差1%以内に収まっています。関税0円の品目でも556円の基本料はかかります。これは実測3件だけに基づく暫定値で、データが増え次第この係数は見直す予定です。
低額品では手数料負けする
実測から分かったもう一つの事実です。3,611円のボールペンでは、関税451円に対して手数料608円と、手数料のほうが高くなりました。支払い総額1,059円のうち57%が手数料です。
手数料は関税額に連動する費用ですが、関税額が小さい・ゼロの商品では実質的に556円前後の固定費になります。商品が安いほど利益に対する比重が上がるので、関税がゼロの品目であっても556円前後は必ず出ていくと考えて損益計算に入れてください。
この点は、Ship&coを使うかどうか以前の問題です。Ship&coを使えばこの手数料が下がるわけではないので、低単価品の採算を改善したいなら、発送単価そのものではなく取り扱う商品の単価を見直すほうが効きます。
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Ship&coを選ぶ余地があるとすれば
コスト以外の観点も公平に書いておきます。Ship&coの価値は、関税の安さではなく次のような点にあります。
- Shopifyやネットショップとの連携で、注文データからそのまま送り状を発行できる
- 日本郵便以外の配送業者もまとめて一元管理できる
- 複数人で出荷作業を回すときに、操作の標準化がしやすい
つまり出荷件数が多く、人手や工数のコストが1件33円を上回る規模の事業者にとっては、利用料を払う価値が出る可能性があります。ただしそれは工数の話であって、関税コストの話ではありません。判断基準をコストのみに置くなら、選ぶ理由は残りません。
よくある質問
Q. Ship&coを使うと関税が安くなりますか
なりません。関税を計算しているのは裏側のZonosなので、同じ品目・同じ申告価格なら金額は変わりません。Ship&coの利用料が上に乗るだけです。
Q. Zonos Prepayの利用料はいくらですか
アプリの利用自体は無料です。かかるのは関税と手数料(通関手数料+為替コストの合計)で、手数料は品目ごとではなく1パッケージごとに発生します。
Q. 手数料はいくら見ておけばいいですか
「556円+関税額×10.3%」で計算してください。実測3件(552円・608円・793円)から求めた式で、誤差は1%以内でした。関税がゼロの品目でも556円前後はかかります。ただしこれは実測3件からの推計であり、正確な料率は公表されていません。
Q. 月に何件くらいからShip&coを検討すべきですか
コストだけで判断するなら、件数がいくつでも検討する必要はありません。検討が必要になるのは、出荷作業の工数が利用料を上回ったときです。その場合も、削減できるのは人手のコストであって関税ではありません。
Q. Ship&coの最低月額はどうなっていますか
請求サイクル中に1件も送り状を発行しなくても、最低月額インフラ料金1,100円がかかります。繁閑の差が大きい個人規模では、この固定費が効いてきます。
Q. Zonosのダッシュボードは1件ずつ手入力ですか
はい、荷物ごとに入力する形です。ただしブラウザから操作できるため、作業そのものは定型化できます。「1件ずつが大変だからShip&co」という理由で切り替えると、コストだけ増えて効果が薄くなる可能性があります。
Q. 高額品でも同じ式が使えますか
腕時計(関税2,316円・手数料793円)の実測で誤差0.3%だったので、この価格帯までは使えると見ています。ただし実測3件だけに基づく式なので、さらに高額な品目での検証はまだ済んでいません。あくまで概算として扱ってください。
まとめ
この記事の要点
- Ship&coは関税の元締めではなく、Zonosの上にかぶせる出荷管理レイヤー
- 関税と手数料はどちらを通しても同額。Ship&coを使うと利用料が純粋に上乗せされる
- Zonos Prepayのアプリ利用料は無料なので、コストの比較は「上乗せがあるかないか」にしかならない
- 「33.3件で逆転」はShip&co内部のプラン選択の分岐点であって、Zonosとの比較ではない
- Zonosの手数料は実測3件(552円・608円・793円)から、「556円+関税額×10.3%」という式に推定を組み直した(誤差1%以内)
- 低額品では手数料が関税を上回る。3,611円の商品では総額の57%が手数料だった
米国向けの採算を見るときは、送料・関税・手数料を分けずに総額で把握するのが早道です。発送コスト比較ツールで実際の重量と申告価格を入れて確認すると、どの配送手段がいくらになるか一覧で比べられます。
出典:日本郵便「国際郵便に関するお知らせ」(Ship&coの関税事前払い対応に関する案内)、Ship&coの公開ヘルプに掲載された各料金プラン、日本郵便が公開しているZonos Prepay操作マニュアル。実測の関税額・手数料は運営者が2026年9月に実際に決済した3件の記録によるものです。料金・制度はいずれも2026年9月時点の情報で、手数料の推定式は実測3件に基づく暫定値です。