関税と送料の基礎知識

見積もりのEXW・FOB・CIF・DDPで関税はどう変わる?課税価格に足す運賃・保険料と計算例(2026年10月)

海外の仕入れ先から見積もりを取ると、「FOB 300ドル」「DDP 380ドル」のように、金額の前に条件がついてきます。この条件は、品物をどこで引き渡し、どこまでの費用を売手が持つかを示すもので、日本の関税・消費税の額を直接決めるものではありません。日本の課税価格は、支払う代金に、日本の輸入港に着くまでの運賃と保険料を足した額です。同じ品を同じ方法で運び、輸入港までにかかる費用の総額が同じなら、どの条件で買っても課税価格は同じになります。違うのは、見積もりの数字にどこまでの費用が入っているかです。実際には条件によって売手が上乗せする額が変わるので、見積もりどうしは輸入港までの総額にそろえてから比べます。

  • 日本の課税価格は、現実支払価格+輸入港に着くまでの運賃・保険料
  • EXW・FOBの見積もりには国際輸送の運賃と保険料が入っていない。自分で足して計算する
  • CIFの見積もりには輸入港までの運賃と保険料が入っている。原則としてそのまま課税価格の元になる
  • DDPの見積もりには関税・消費税・国内の配送まで入っている。額を明らかにできれば差し引く
  • DDPでも関税・消費税がなくなるわけではない。売手が払う分が価格に入っているだけ
  • 0.6掛けは個人使用の特例。業務で使う物は名義が個人でも使えず、売るための仕入れも個人使用にはあたらない

確認日 2026年10月24日(税関・財務省・国税庁・ICC・JETRO・Alibaba.comの公式ページ)

日本の課税価格は「輸入港に着くまで」の費用で決まる

カスタムスアンサー1403では、課税価格の計算方法を「その輸入貨物について現実に支払われた又は支払われるべき価格(現実支払価格)に、この価格に含まれていない運賃等(加算要素)の額を加えて、課税価格を計算する方法です。」と説明しています(関税定率法第4条)。加算要素の1つめが「輸入貨物が輸入港に到着するまでの運送に要する運賃、保険料その他運送に関する費用」です。

財務省・税関の「関税評価の初歩」には「CIF(運賃保険料込)条件の場合の運賃等は基本的に仕入書価格に含まれることとなるため注意が必要です。」とあります。CIF条件で買ったのに運賃をもう一度足すと、二重に数えることになります。

足すものには根拠が要ります。「関税評価の基礎」では、加算は「客観的な、かつ、数値化された資料に基づいてのみ行われます。」とされています。運賃と保険料は、請求書や運送状など、額がわかる資料で示せるようにしておきます。

反対に、日本の港や空港に着いたあとの国内の運賃は、仕入書と分けて示せる場合、課税価格に入りません。下で取り上げるDDPの事例でも、輸入港から倉庫までの運賃は差し引く費用として扱われています。

インコタームズは引き渡しの場所と費用の分かれ目を決める

EXWやFOBといった条件は、国際商業会議所(ICC)が定めるインコタームズの規則です。現在の版はインコタームズ2020で、規則は全部で11あります。JETROは「売主・買主間の物品の引き渡しに関する危険の移転の分岐点、役割や費用…の負担区分など…をまとめた取引条件です。」と説明しています。

課税価格を出すときに見るのは、見積もりの額に輸入港までの運賃・保険料が入っているか、輸入港より先の費用や日本の税が入っているかの2点です。条件ごとにまとめると次のとおりです。

条件 引き渡しの場所 見積もりに入る主な費用 課税価格を出すときに足すもの・引くもの
EXW 売手の工場・事業所 品物の代金だけ 輸出港までの運送・輸出通関、国際輸送の運賃、保険料を足す
FCA 買手が手配した最初の運送人 運送人に渡すまでの費用 国際輸送の運賃と保険料を足す
FOB 輸出港で本船の船上(海上輸送だけ) 船に積むまでの費用 国際輸送の運賃と保険料を足す
CFR 輸出港での船積み 輸入港までの運賃 保険料を払っていればその額を足す
CIF 輸出港での船積み 輸入港までの運賃と保険料 原則として足さない(買手が別に掛けた保険料は足す)
CPT・CIP 売手の国での運送人への引き渡し 運賃(CIPは保険料も) CPTは保険料を払っていれば足す。輸入港より先の運賃が入っていれば分けて引く
DAP・DPU 買手の国の指定の場所(DPUは荷降ろしまで) 指定の場所までの運送 輸入港より先の国内の運賃を分けて示せれば引く。関税・消費税は買手が払う
DDP 買手の国の指定の場所(輸入通関まで売手) 運送、輸入通関、関税・消費税 関税・消費税・国内の運賃の額を明らかにできれば引く

CFR・CIF・CPT・CIPは運賃を売手が持ちますが、品物の危険は売手の国で引き渡した時点で買手に移ります。

EXW・FOBは運賃と保険料を自分で足す

EXWは、売手の工場や事業所で品物を渡す条件です。輸出通関も売手はしません。ICCは「EXW is suitable primarily for domestic trade」(主に国内取引向き)と書いています。EXWの見積もりから課税価格を出すには、工場から輸出港までの運送と輸出通関の費用、国際輸送の運賃、保険料をすべて足します。

FOBは、輸出港で本船の船上に品物を載せた時点で、危険と費用が売手から買手に移る条件です。ICCの区分では海上輸送だけに使うもので、航空便や国際宅配便のように何の輸送にも使える条件はFCAです。FOBの見積もりなら、輸入港までの運賃と保険料を足します。運賃は箱の大きさで変わることがあります(容積重量とは?箱のサイズで送料が変わる仕組み)。

CIF・CFRは運賃が入っている

CFRとCIFは、輸入港までの主な国際輸送の運賃を売手が見積もりに入れる条件です。CIFはさらに保険も入っています。CIFの見積もりなら、運賃と保険料はすでに仕入書の価格に含まれているので、原則として何も足しません。

ただし、CIFの保険は既定では協会貨物約款(C)で、CIPで求められる(A)相当より補償の範囲が狭くなります。補償を広げようと買手が別に保険を掛けた場合、その保険料は足します。税関の質疑応答事例34は、輸入港までの保険料を「輸入貨物の輸入港までの運送に関して実際に要した保険料をいいます。」としています。CFRの場合は、買手が輸入港までの保険料を払っていれば、その額を足します。

DDPは税と国内配送を差し引く。税がなくなるわけではない

DDPは、輸入通関を含めて売手が全部の責任を持つ条件です。見積もりの額に、関税・消費税と日本国内の配送まで入っています。ICCは、売手が輸入通関まで引き受けることについて、問題が起きることがある(「which may pose problems」)と注意を添えています。

税関の質疑応答事例1は、売手が関税と消費税を払い、輸入許可のあと倉庫まで運び、関税・消費税・倉庫までの運賃を含む仕入書価格を買手が払う、という取引を取り上げています。回答は「それらの費用の額を明らかにすることができる場合、仕入書価格からそれらの費用の額を控除した価格を現実支払価格として計算することとなります。」です。DDPの見積もりでも、課税価格は輸入港までの費用で決まり、税そのものや国内の運賃は引いて考えます。

DDPで買えば関税と消費税がかからない、というわけではありません。売手が払う分が価格に入っているだけです。また、関税を納める義務があるのは「貨物を輸入する者」で、原則として仕入書(または船荷証券)に記載されている荷受人です(カスタムスアンサー1103)。DDPと書かれていても、誰が輸入者になるかは仕入書の荷受人などで決まるため、日本側で手続きや支払いが一切ないとは言い切れません。誰の名前で通関するのかは、見積もりの段階で仕入れ先に確かめておきます。

計算例 輸入港までの総額が同じならFOB・EXW・CIFの税額は同じ

プラスチック製品(簡易税率3%、課税価格20万円以下)を仕入れる例です。条件による違いだけを見るため、輸入港までの総額がどれも362USDになるようにそろえた仮の数字にしています。円換算は1USD=158.02円(欧州中央銀行の参照レート、2026年10月16日)で計算しました。実際の通関では税関長が公示するレートで換算されます。関税は課税価格の1,000円未満を切り捨てて計算し、消費税の課税標準は課税価格+関税の1,000円未満を切り捨て、国税7.8%と地方消費税(国税の22/78)は100円未満を切り捨てます。

見積もり 足すもの 課税価格の元 税合計
例A FOB 300USD 運賃60USD+保険料2USD 362USD 7,400円
例B EXW 280USD 輸出港までの運送・輸出通関20USD+運賃60USD+保険料2USD 362USD 7,400円
例C CIF 362USD なし(運賃・保険料込み) 362USD 7,400円

例Aの内訳は課税価格57,203円、関税1,700円(57,000円×3%=1,710円を切り捨て)、消費税の課税標準58,000円、国税4,500円、地方消費税1,200円で、合計7,400円です。例B・例Cも課税価格の元が同じなので税額も同じです。

よくある間違いは、FOB 300USDだけで計算してしまうことです。この場合、課税価格47,406円、関税1,400円、国税3,700円、地方消費税1,000円で、税合計は6,100円になり、運賃と保険料の分の1,300円を少なく見積もることになります。申告では足す必要があるので、原価の見込みが狂います。保険を掛けていない場合は、FOB 300USD+運賃60USD=360USDで、課税価格56,887円、税合計7,300円です。

FOB 300ドルとDDP 380ドルを比べるときは、FOB側に運賃・保険料と日本の税を足し、国内の配送が別にかかるならそれも足してから、DDPの総額と並べます。DDP側は、内訳に関税・消費税・国内配送がいくら入っているかを見積もりで確かめます。消費税の課税事業者なら、輸入時の消費税は仕入税額控除の対象になります(国税庁)。仕入税額控除は課税事業者が行うものなので、免税事業者は輸入時の消費税も原価として見込み、自分の立場に合わせて比べてください。計算式の細かい流れは関税・消費税の計算式を具体例で解説にまとめています。

個人使用の0.6掛けは仕入れでは使えない

カスタムスアンサー1405には「輸入者が個人的に使用する貨物は…(海外小売価格(※)×0.6)を課税価格とします。」とあります。これは輸入者が個人的に使う物の特例です。売るための仕入れは、個人的な使用にはあたりません。

税関の少額輸入貨物の簡易税率のページも、0.6を掛けるのは個人が自分で使う目的の貨物とし、「その他の貨物の課税価格は、商品の価格に運送費および保険料を足した金額になります。」と書いています。税関の質疑応答事例(第4条の6関係)1は、レストランを営む会社が店で使うテーブルセットを、店長の個人名義で輸入する場合について「業務において使用される貨物であることから、輸入者の個人的な使用に供される輸入貨物に係る課税価格の決定の特例を適用して課税価格を計算することはできません。」とし、「仕入書の名宛人が個人名であるか否かにより判断されるものではありません。」と続けています。

なお、この0.6掛けの特例は2028年4月1日に廃止されます(財務省)。仕入れの計算はもともと0.6を使わないので、変わることはありません。仕入れと個人使用の違いは中国から仕入れるときの関税と消費税で詳しく取り上げています。

少額の免税と簡易税率も、運賃込みの額で判断する

課税価格の合計が1万円以下なら関税と消費税は免税です(カスタムスアンサー1006)。ただし革製のカバン、ハンドバッグ、編物製衣類などは除かれます。課税価格の合計が20万円以下なら簡易税率が使え、プラスチック製品は3%、その他のものは5%などです(カスタムスアンサー1001)。

どちらも運賃・保険料を足したあとの課税価格で判断するので、EXWやFOBの見積もりの額だけで下回っていても、足すと超えることがあります。詳しくは課税価格1万円以下は免税|少額輸入貨物の簡易税率と品目別の簡易税率一覧を見てください。

Alibaba.comで見積もりを取るときは配送条件を確かめる

Alibaba.comは、公式に「世界最大の B2B トレーディングプラットホーム」と説明されている、企業間の仕入れ向けのサービスです。仕入れ先に見積もりを依頼すると、金額と一緒に配送の条件が示されます。見積もりが届いたら、どの条件の額か、運賃と保険料が入っているか、DDPなら関税・消費税と国内配送の内訳がわかるかを確かめ、この記事の計算で課税価格をそろえてから比べます。

Alibaba.comのインコタームズの解説では、DDPは海上輸送には勧めないとしつつ、航空の国際宅配便や小包では一般的だと書かれています。また、関税は輸入者(通常は買い手)が負担するものと説明されています。

Trade Assurance対応の仕入れ先(Trade Assurance Suppliers)に注文し、支払いをAlibaba.comを通して行うと、Trade Assuranceの対象になります。公式ページには「Trade Assurance protects online orders when payment is made through Alibaba.com.」(Alibaba.comを通して支払った注文を保護します)とあり、配達から30日以内なら品質に満足できない場合に返金を申し出られると書かれています。同じ品の見積もりを複数の仕入れ先から取り、条件をそろえて比べられます。

Alibaba.comで仕入れ先に見積もりを依頼する

※本項には広告リンクを含みます

計算ツールについて

当サイトの関税・消費税計算は、個人使用(0.6掛け)を前提にした計算です。仕入れの税額を見積もるときは、見積もりの額に輸入港までの運賃と保険料を足した額(例Aなら362USD)を0.6で割って商品価格の欄に入れ、送料の欄は0にしてください。CIFの見積もりならその額を、DDPの見積もりなら関税・消費税・国内配送を引いた額を元にします。

まとめ

見積もりの条件が違っても、日本の課税価格は「支払う代金+輸入港に着くまでの運賃・保険料」で決まります。EXW・FOBは運賃と保険料を自分で足し、CIFはそのまま、DDPは関税・消費税と国内配送を引いて考えます。比べるべきは、見積もりの額にどこまでの費用が入っているかと、誰が輸入者になるかです。

出典

いずれも2026年10月24日に確認しました。

本記事は2026年10月24日時点の公式情報にもとづく関税ナビ編集部の整理です。法的・税務の個別の助言ではありません。実際の課税価格と税額は、輸入申告のときの税関長公示レートと税関の判断で決まります。大きな仕入れの前には、税関や仕入れ先で最新の内容を確かめてください。

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