米国宛ての荷物を近所の郵便局に持ち込んだら、その場で断られた。あるいは引受再開のニュースを見て出しに行ったのに、取り扱いがないと言われた。2026年9月時点で米国宛ての郵便物は、すべての郵便局で引き受けているわけではありません。「指定郵便局」でのみ取り扱われます。この記事では、なぜそうなったのかを制度の経緯から説明し、どの局が対象なのか、持ち込む前に何を準備すべきかを整理します。
結論:米国宛ては局を選ぶ。集荷も使えない
先に押さえておくべき点を3つ挙げます。
- 米国宛て郵便物は指定郵便局でのみ引き受け。最寄りの局が対象とは限らない
- 販売品は関税事前払いアプリで手続きを済ませたラベルがないと窓口で止められる
- このラベルは日本郵便のWeb集荷サービスが使えず、持ち込みが前提になる
3つ目が実務では一番効いてきます。荷物1件ごとに郵便局まで出向く必要があるため、発送作業にかかる時間が制度変更前とはまったく変わりました。
デミニミス制度とは何だったのか
デミニミス(de minimis)は「少額のものは扱わない」という意味のラテン語由来の言葉で、輸入における少額免税の制度を指します。一定金額以下の輸入品については、関税を課さず簡易な手続きで通すという仕組みです。
その前提が2025年8月に米国のデミニミス制度が廃止されたことで崩れました。少額でも関税の対象になり、少額でも申告が必要になったわけです。
引受停止から条件付き再開までの経緯
制度の変更に配送側の実務が追いつかず、一時的に荷物を送れない期間が発生しました。時系列で整理します。
| 時期 | できごと |
|---|---|
| 2025年8月 | 米国のデミニミス制度が廃止。これに伴い日本郵便が米国宛て郵便物の一部引受を停止 |
| 2025年10月17日 | eBayが日本から米国宛て・2,500ドル未満の取引でDDP(関税元払い)を義務化 |
| 2026年4月14日 | 日本郵便が米国宛て郵便物の引受を条件付きで再開 |
再開はしたものの、条件が2つ付きました。引受は指定郵便局に限ること、そして販売品は関税を事前に支払うことです。この2つが現在の運用の土台になっています。
指定郵便局とは
指定郵便局とは、米国宛て郵便物の引受を取り扱う局として指定された郵便局のことです。すべての郵便局が対象ではありません。
数としてはかなり絞られていて、市区町村の規模に対して数局という単位です。徒歩圏内の小さな郵便局はまず対象外と考えたほうが実態に近くなります。
最寄りの対応局は日本郵便公式サイトの郵便局窓口検索で調べられます。取扱サービスの条件で絞り込めるので、持ち込む前に必ず確認してください。検索結果で判断がつかない場合は、行こうとしている局に電話で「米国宛てのEMSを引き受けているか」を聞くのが確実です。
なお料金そのものは全国どの郵便局でも同じです。指定局かどうかで変わるのは引き受けてもらえるかどうかであって、送料が高くなったり安くなったりすることはありません。
持ち込む前に準備しておくもの
指定郵便局に着いてから慌てないよう、次のものを先に用意しておきます。
- 関税事前払いアプリで発行したラベル。販売品の場合は必須です
- 梱包後の実測重量。料金は重量帯で決まるため、境目をまたぐと数百円変わります
- 内容品の申告内容(品名・価格・原産国)
- 郵便料金の支払い手段
ラベルが正しく作れているかは、ラベルPDFの左上に「DDP-(申告ID)」の表示があるかで確認できます。この表示があれば関税前払いが反映されており、手書きの追記は不要です。
国際郵便マイページだけで進めると窓口で止まる
ここがもっとも多いつまずき方です。
国際郵便マイページサービスで送り状を作ると、米国宛ての販売品であってもエラーを出さずに登録から印刷まで完了してしまいます。追跡番号も発行されます。ところがそれを持って指定郵便局へ行くと、窓口で「関税を事前に払ってから」と指摘されます。
正しい流れは、関税事前払いアプリの中で内容品登録から関税の支払い、ラベル作成までを行うことです。そこで発行される追跡番号が実際に使うもので、マイページで先に作った番号は使いません。
あわせて読みたい EMSで米国へ送る手順|国際郵便マイページの使い方と7つのつまずき
ログイン直後の告知バナーと実際の画面の挙動が食い違うことがあるため、バナーの文言だけで判断しないでください。
集荷が使えないことの影響
制度変更の影響として見落とされがちなのが、集荷の可否です。
日本郵便のWeb集荷サービスが対応しているのはEMSと国際小包で、関税事前払いアプリで作ったラベルの荷物は持ち込みが前提になります。つまり米国宛てを1件送るたびに、指定郵便局まで出向く必要があります。
実務上のインパクトは小さくありません。実際、50ドル程度のトレーディングカード1枚を米国へ送った際、関税の手続きとラベル作成、指定郵便局への持ち込みで半日近くかかったという記録があります。そのときの利益は約2,415円でした。
対してクーリエ(DHL・FedEx)を使うルートは集荷を呼べるため、自宅で完結します。送料の数百円差より、1件あたりの拘束時間のほうが効いてくる場面があるということです。
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仕入れ・出品の設計にどう影響するか
この引受ルールは、単なる発送手続きの話にとどまりません。何を仕入れて何を出品するかにまで影響します。
- 2kg以下の軽量・低単価品は手間が利益に見合わなくなる。関税額が小さくても、申告とラベル作成、持ち込みの手間は高額品と変わらない
- 発送手段を先に決めてから仕入れる。集荷が呼べない手段しか選べない商品は、その時点で1件あたりの工数が確定する
- 単価の高い商品に集中するほうが、同じ工数あたりの利益は大きくなる
米国向けの採算を見るときは、送料と関税だけでなく「この1件に何時間かかるか」まで含めて考える必要があります。金額面は発送コスト比較ツールで送料と関税の総額を試算すると数分で把握できます。
米国以外の国はどうなっているか
今回の引受ルールは米国限定の制度です。他国には適用されません。
たとえばカナダは第3地帯で、EMSは500gまで一律3,150円(米国の第4地帯3,900円より安い)。関税は通常DDU、つまり受取人が受け取り時に支払う形です。関税事前払いアプリを通す必要もありません。
ただしカナダには別の制約があり、貴重品は郵便で引き受けてもらえないことがあります。実際に真珠のネックレスをカナダ宛てEMSで持ち込んだところ、「カナダは貴重品を郵便局から送れない」という理由で窓口で断られた例がありました。国ごとに引受条件が異なるため、宛先国が変わったら必ず確認してください。
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よくある質問
Q. 指定郵便局の一覧はどこで確認できますか
日本郵便が公表しています。行こうとしている局が対象かどうか不明な場合は、その局に電話で確認するのが確実です。
Q. ポストに投函することはできますか
関税の事前払いが必要な販売品は、窓口での引受が前提です。ポスト投函では所定の手続きを確認できません。
Q. 指定郵便局なら必ず引き受けてもらえますか
ラベルと申告が正しく整っていれば引き受けてもらえます。逆に、関税事前払いの手続きが済んでいないラベルは指定郵便局でも断られます。局の指定と、関税手続きの完了は別々の条件です。
Q. 書類や贈り物も指定郵便局に持ち込む必要がありますか
関税の事前払いが免除されるのは書類と、個人間の贈り物(100USドル以下)です。ただし米国宛て郵便物の引受局の指定は別の条件なので、持ち込み先は事前に確認してください。
Q. なぜ集荷が使えないのですか
日本郵便のWeb集荷サービスが対応しているのはEMSと国際小包で、関税事前払いアプリ経由で作成したラベルの荷物はその対象に含まれていないためです。
まとめ
この記事の要点
- 2025年8月の米国デミニミス制度廃止を受けて、日本郵便は米国宛て郵便物の一部引受を停止した
- 2026年4月14日に条件付きで再開。条件は「指定郵便局での引受」と「販売品は関税事前払い」の2つ
- 指定郵便局は限られている。最寄りの対応局は日本郵便公式サイトの窓口検索で確認する(2026年9月時点)
- 国際郵便マイページだけで作った送り状は窓口で止められる。関税事前払いアプリのラベルが必要
- このラベルの荷物は日本郵便のWeb集荷が使えず、持ち込みが前提になる
- 1件あたりの工数が増えるため、低単価・軽量品ほど採算が取りにくくなった
- この引受ルールは米国限定。カナダなど他国は別の条件で運用されている
制度の全体像は入口記事にまとめています。
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金額面の試算は発送コスト比較ツールで確認してください。
出典:日本郵便「国際郵便に関するお知らせ」(米国宛て郵便物の引受停止および引受再開に関する案内)、日本郵便の国際郵便料金表。指定郵便局の具体例、窓口での指摘内容、集荷可否は、運営者が2026年9月に実際に発送手続きを行った際に確認した内容です。いずれも2026年9月時点の情報で、指定郵便局は変更される可能性があります。